2020.12.05

東海大学 学生コーチ半杭~‟東海大シーガルス”とは何かを求めて~

初めまして、東海大学男子バスケットボール部で学生コーチをしている半杭 隆治(はんぐい りゅうじ)です。

本来、この様に表に出て何かを発信するのは、選手がやるべきであってスタッフは控えるべきだと思っていましたが、スタッフである前に4年生として何か伝えられることがあるならと思い、書かせて頂きます。


私は、先ほども書かせていただいたように、選手ではなくスタッフとしてチームの活動に携わっています。スタッフと一括りにしてもその中での役職は様々で、私の様な学生コーチの他に、選手のラン・ウエイトトレーニングを指導するストレングス&コンディショニングコーチ(S&Cコーチ)や、選手の身体の状態を見て、ケアを行うアスレティックトレーナー(ATトレーナー)。スケジュールの管理や各大会の選手登録などを行うマネージャーなど様々な役職があります。私が4年間やらせていただいている学生コーチという役職は、主に練習の手伝いや、自チームや相手チームのスカウティングを行います。最近では選手の自主練習を見ることも増えてきて、毎日選手と一緒にバスケットボールの技術向上のために考えて活動しています。

正直言いづらいのですが、私が学生コーチになった理由はこれといってありません。中学生の頃に初めてを見て以来ずっと憧れだった東海大学シーガルスに入ることができれば、どんな役職でもよかったです。


私がシーガルズを好きになったのは中学校1年生の冬でした。国立代々木第二体育館でオールジャパンを観戦しに行った時に行っていた試合が、東海大学 vs パナソニックトライアンズさんでした。試合結果としては大差をつけられて敗戦してしまいましたが、パナソニックの外国籍選手や日本代表選手が次から次へとリングにアタックしてくるのに対して、臆することなく身体をぶつけ、全員で堅くディフェンスをする東海大学を見て、こんなチームが大学界にあったのか、と驚き感動したのがきっかけでした。そこからは暇さえあれば、シーガルズの試合を観に行きました。春のトーナメントやインカレはもちろんのこと、リーグ戦を観戦しに自宅から片道2時間かけて埼玉県の和光市まで行ったこともあります。シーガルスが大好きで憧れの存在だったため、入部して4年目の今でも時々、「あぁ今自分は、あの陸川コーチと一緒のチームに所属しているんだなぁ」と感慨深くなる時があります。

 

                       写真提供者:東海スポーツ編集部



入学初年度の2017年シーズンはリーグ戦が9位、インカレでは準々決勝で逆転負けを喫しベスト8で終了。年間を通して苦しいシーズンでした。

次年度の2018年シーズンは打って変わって、リーグ戦とインカレを優勝し、1年間を通して東海大の強さを証明できたシーズンだった様に思います。自分はこの年Bチームで大きく関わってはいませんでしたが、シーズンを通して全て良い方向に向く様な感覚がありました。又、内田旦人キャプテンを中心に4年生全員が一つになってチームを引っ張っていく姿から、4年生の働きの大切さというのを感じました。

2017年シーズンから取り入れた、アルバルク東京のルカ・パヴィチェビッチヘッドコーチのピックアンドロールを主体としたシステムも習熟度が増し、メンバーもほとんど変わらずに臨むことができる2019年シーズンはチーム内の誰もが4冠を期待していました。


2019年シーズン序盤、昨年の勢いそのままに春に行った練習試合を全勝で終え春のトーナメントを迎えましたが、準々決勝で白鷗大学、5位決定戦では日本体育大学に僅差で敗れました。その後も夏のオールジャパン神奈川県予選決勝では神奈川大学に敗戦。リーグ戦も3連敗などがあり、最終結果は6位と満足のいく結果ではありませんでした。リーグ戦終了後はスタートのメンバーを中心に何度も話し合いを重ね、寺嶋キャプテンや玄さんがチームを牽引し、必死に準備をしてインカレに挑みました。その集大成が準々決勝の専修大学戦で表れました。試合前半は専修大学のオフェンスをシーガルスらしい堅いディフェンスで封じることに成功し、最大で20点差をつけることができました。しかし、後半は戦況が一変し専修大のゾーンディフェンやトランジションオフェンスに対応することができず、まさかの逆転負けでインカレベスト8という結果で終わりました。

私はこのシーズンから初めて学生コーチとしてベンチ入りをさせていただきました。この年の私の一番の役目は、相手のセットプレイを味方に伝え、選手が少しでも守りやすくなる様にすることでした。それがいい事か悪いことかはさておき、この一年間はとにかくこの仕事を全うすることに準備をしようと自分の中で決めていました。そういった覚悟を決めるきっかけとなったのは、玄さんから試合中にかけられた言葉がきっかけでした。それは関東トーナメント準々決勝の白鷗大戦試合中でした。白鷗大は同じコールでもパスをする方向でプレイが変化するセットを使用していたので、コールが起こる毎にその都度次に何が起こるかを伝えていたところ、「お前のその声かけが今は助けになっているから続けてくれ」と言われたことからでした。初めて入ったベンチで、何をすればいいか定まっておらず困っていた自分にとって本当に助けになった一言でした。2019年のシーズンは結果を出せず悔しいという気持ちと、そういった面で支えてくださった4年生の方々に有終の美を飾らせることができなかったということに非常に申し訳なさを感じました。


                       写真提供者:東海スポーツ編集部


インカレ終了後、私達新4年生は帰りのバスの中ですぐにミーティングの日程を決めました。そこではAチーム、Bチームで一緒に「インカレ優勝」という目標に向けて1年間を通して良いチームへとなるための準備をしようという話をし、津屋は、「昔の東海を取り戻す」と言いました。新チーム開始となった2月からの練習は、津屋のその言葉を全員がしっかりと受け止めた形で入ることができたのではないかと思います。選手・スタッフ全員が見る人をフルフル・ワクワクさせるチームになるべく、毎日ベストを尽くしました。特に新キャプテンになった津屋だけでなく、それを支える役目である同じく4年生の西田と碧人も常にチームのことを考え動いてくれました。

しかし、確実に良い練習が積み上げられていると実感できていた中、コロナにより練習が中断。

私達は良い流れできているのに中断しないといけない状況に、やるせなさを感じていました。心の中では、積み上げたものが全部なくなってしまうのではないかと感じ、大きな不安も残りました。しかし、その様な状況の中でも、神奈川に残った4年生の西川S&Cコーチが、同じ様に帰省せずに神奈川に残った選手達のトレーニングに付き添い、毎日指導をくれました。社会情勢もあったため感染予防を徹底した中で室内の限られたスペースしか使用できませんでしたが、西川コーチの献身的かつ継続的な支えで、自粛前より身体が大きくなった選手も出てきました。帰省した人達とも常に連絡を取り合い、いつ練習が再開しても活動可能な状態にチームは向かっていました。色々な方々が支えてくださったことで、再開後はすぐに全員が一つの方向を向いて練習に臨むことができたと感じています。改めて、この場を借りて自粛期間中や練習再開の際に尽力してくださった大人スタッフの方々に感謝を申し上げます。


先日行われたオータムカップはそういった全員の準備が表れたのではないかと感じています。例年よりも短い準備期間の中で選手やスタッフが多くの時間を割いて、優勝するためにハードワークをしました。練習後にはほぼ毎日ビデオミーティングを行いました。最初は颯太が軽く「暇だから練習の映像見ようか」言って、と自分がミーティングルームで流し始めたのがきっかけでしたが、それからは選手から自主的にコーチ陣にフィードバックを促す様になっていきました。それ以外でもそれぞれが空いている時間を見つけては、トレーニングやワークアウトを行いました。又、それに対して自分の同期の学生スタッフや後輩の学生コーチは嫌な顔をせず毎日付き合っていました。全員のその姿勢が優勝という結果に結びついたと感じています。この結果に満足することなく、インカレに向けてまたハードワークをしていきます。

また、この様な状況の中でも大会を開催してくださった、関係者の皆様や学生連盟の方々には厚く感謝を申し上げます。


話は少し戻りますが、コロナによる自粛期間中、私は津屋が掲げた「昔の東海を取り戻す」という目標を達成するには何が必要なのか改めて考えていました。2019年のシーガルスは周りからは「タレント軍団」と言われながらも勝てずにいましたが、正直私自身何が原因なのかは、はっきりとわかっていませんでした。そこで、自粛期間を使って昨年の試合映像をとにかく見返しました。その結果見えてきた原因は、自分達が「自滅」をしていたということでした。2019年シーズンは、先ほど挙げたルカさんのシステムを使用して3年目だったため、周りの大学も私達が何をしてくるか大体わかっている状態でした。そのことは私たちも十分理解しており、更なる対応に追われていました。その様な現状が事実としてある中で勝手に自分達の中で、相手に「自分達のやりたいことが完全に読まれていて、対応されているから私たちのバスケットが通用していない」と感じていました。しかし、実際に試合映像を見返したところ、走らないといけないところを走らずに歩いてプレイをしていたり、スクリーンをかけないといけないところでかけていなかったりと相手が関係していないところで手を抜いてしまっているシーンが多く見受けられました。そこで、私は自分の中で「当たり前のことを当たり前にできる様に徹底をする」とテーマを持って練習に臨みました。自分自身も選手と同じ学生という立場であることは理解している中ではありますが、選手には練習やワークアウトにおいて何をする時でも、常にインテンシティを上げてプレイをすることを求めました。それがどこまで今シーズンのこれまでの結果に関係しているかはわかりませんが、それが自分の中で変化した点でありました。


そしてさらに、もう一つ私の中で変化したことがありました。それは「チームが勝つために行動をする」ということです。非常に当たり前のことであり、シーガルスを卒業していった大先輩の方々は当然の様に行なっていたことだと思われますが、恥ずかしながら私にはその部分が圧倒的に足りていませんでした。先ほどもあげた様に、ベンチから相手のコールプレイを復唱することなど、自分の仕事のことは頭の中に常にあり実行をしていましたが、その時その時のチームで本当に必要なことが見極められていませんでした。そんな中できっかけとなったのは、昨年のクリスマスに観戦に行った、アルバルク東京 vs 秋田ノーザンハピネッツの試合でした。その試合はあるバルク東京のルカヘッドコーチが2Qで立て続けにテクニカルファウルを取られ退場となってしまった危機的状況の中でも、後半に二桁以上離れていた点差を巻き返し、アルバルク東京が逆転勝利を収めた試合でした。その試合後にアルバルク東京でアシスタントコーチをしていらっしゃる水野さんが、「このチームは選手、スタッフ全員が毎日勝つためにファイトしている。」とおっしゃっていました。その言葉を聞いた時に、自分が何のためにシーガルスに所属させてもらっているか、自分の中で改めて気づかされたような気がしました。

そこから今シーズンの練習中は、とにかく声を出して、選手に頑張ってもらえるようにすることを第一にしました。今でも時々、自分を見失ってしまい、役割が全うできずにチームに迷惑をかけてしまうことはありますが、その時は同期やチームの皆なに助けてもらっています。それに対しての感謝を忘れずに、チームのために最後まで役割を全うしたいです。




インカレは4年生の大会です。これは陸川コーチも常々言ってらっしゃる事で、自分も中学生の頃からずっとインカレを毎年見てきて、本当にそうだと感じます。

中学生の時に一人で観にいった2012年のインカレ決勝で、青山学院大に勝利し涙を流す狩野さんを見ていたら、全然関係無い自分でも泣いていました。


そのぐらい4年生の気持ちが重要になってくると思います。選手として出場する津屋、西田、碧人はもちろんのこと、今年のAチームには私を含めてスタッフの4年生が3人いるので、スタッフ陣も含めた6人全員の4年生が「勝ちたい」という思いをどれだけ表すことができるかというところが優勝に必要なことです。先日、インカレ組み合わせが決まり、碧人が「俺らは代々木で始まり、代々木で終わるな」と独り言を言っていた様に、ブザービーターで勝って優勝した新人戦以来の代々木第二体育館で最後に有終の美を飾ることができるように、最高の準備をしてインカレに挑戦したいと思います。そして個人的には、今でも相談に乗ってくれたり、応援のメッセージをくれる去年の4年生の方達の為にも絶対に優勝を届けたいです。その結果、中学生の頃の自分の様にシーガルスに憧れを持ってくれる人が一人でも増えてくれれば幸いです。



最後になりますが、今回このような機会を与えてくださった全日本学連の関係者の皆様に感謝申し上げます。

Writer
前田 琉我(マエダ リュウガ)

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